【開催報告】8月15日(日)過去を知り、今、未来を生きる:8月15日に伝えたいこと-東アジア平和大使プロジェクトv.4-
戦後76年となる8月15日(日)に、東アジア平和大使プロジェクトv.4をオンラインにて開催しました。
戦争の記憶に触れる回とし、スピーカーは仁川と東京を繋ぐ形で、
文筆家で仁川在住の戸田郁子さんにお話を頂きました。
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開催概要
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東アジア平和大使プロジェクトでは、
8月15日を、被害と加害双方の視点からの平和について思いはせ、立ち止まって考え、
東アジア地域でのより良い未来を築くきっかけとなる日と捉えています。
そのため、昨年より8月15日に、対話の場を設けています。
■テーマ🎵
過去を知り、今、未来を生きる:8月15日に伝えたいこと
今年も、8月15日がやってきます。
皆さんにとって、8月15日は、どんな日でしょうか。
いつもの延長線にある1日、お盆休み、そして、終戦記念日。
日本の「終戦記念日」は、隣国にとってどんな意味を持つのでしょうか。
私達はこの日に、日本・韓国・中国で暮らした郁子さんの人生を鑑にして、
「日帝時代」について知ることで、一人一人がつくる未来について考えたいと思います。
■日時🎵
【第一部】※戸田郁子さんご登壇のメイン回
2021年8月15日(日)
13:00-15:00 (JST)
【第二部】※少人数先着、第一部参加者で希望者のみ10名で実施
2021年8月15日(日)
15:30-16:30 (JST)
■開催形態 🎵
オンライン:zoom
■開催言語🎵
日本語
■リソースパーソン(敬称略)※第一部のみ
戸田郁子(とだいくこ)
作家、翻訳家、編集者(韓国仁川在住)
得意分野は東北アジアの近代史
図書出版土香(トヒャン)運営
仁川官洞ギャラリー館長
http://www.gwandong.co.kr/
1983年より韓国の延世大学韓国語学堂で韓国語研修。
1985年より高麗大学校史学科にて韓国近代史を学ぶ。
1989年に中国黒龍江省ハルビンに語学留学。その後、中国東北地方(旧満洲)の朝鮮族の移住と定着の歴史を取材。
現在、朝日新聞日曜版Globeに「ソウルの書店から」を連載中。
主な著書に『中国朝鮮族を生きる 旧満洲の記憶』(岩波書店)、『80年前の修学旅行』(図書出版土香)『悩ましくて愛しいソウル大家族』『悩ましくて愛しいハングル』『ハングルの愉快な迷宮』(講談社+α文庫)、『ふだん着のソウル案内』(晶文社)など多数。翻訳書に『黒山』(金薫箸・クオン)『世界最強の囲碁棋士、曺薫鉉の考え方』(曺薫鉉箸・アルク)『李さんちの物語』(黄美那・講談社)、『弓』(李賢世・晶文社)など多数。共著に『モダン仁川―鳥瞰図と写真で見る1930年代』(図書出版土香)、『韓国文学を旅する60章』(明石書店)、『韓国・朝鮮の知を読む』『韓国・朝鮮の美を読む』(クオン)など多数がある。
2007年に韓国で「図書出版土香(トヒャン)」を立ち上げ、日中韓をつなぐ本作りに携わっている。主な出版物に『ソリの道をさがして~池成子伽耶琴独奏による民謡集』、『春姫の夢ものがたりー色糸で描く』、『延辺文化大革命~10年の約束』など。
2015年に仁川の旧日本租界に残る築100年の木造住宅を再生して「仁川官洞ギャラリー」を開館。展示やゲストハウスの運営、東アジアの過去と未来を考える仁川歴史散策も行っている。
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過去を知り、今、未来を生きる:8月15日に伝えたいこと
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当日は、約18名の方にご参加頂きました。
郁子さんのお話の前に、参加者の皆さんに平和について3つ、以下を尋ねました。
※回答するかしないかは自由で、単一回答、有効回答数は12人。
日本は平和だと思うか?
思う(4)
思わない(8)
世界は平和だと思うか?
思う(0)
思わない(12)
日本は将来的に、東アジアの国々と武力を伴う衝突を起こすと思うか?
思う(2)
思わない(12)
その上で、郁子さんからはご自身の韓国・中国でのご経験から掘り下げられた、
仁川や旧満州時代の日帝の記憶、そして韓国から日本へのまなざしについてお話しいただきました。
韓国では本日76年式典で文大統領が光復節慶祝辞を発表し、日本への批判が入っていない
広島の戦争の碑の裏に記述がある、「戦争を繰り返さない」というのはどことの戦争か?「憎しみを乗り越えて」というのは誰が誰の憎しみを乗り越えてなのか?(加害としての視点が入っていないのではないだろうか)
北朝鮮は日帝時代をどう教えているのか
モダン都市と呼ばれる仁川では、日本の近代化と足並みを10年ほどの間隔でそろえてきており、日帝時代の痕跡がたくさん残っている
日本が朝鮮にもたらしたとされるものは、神社、たたみ、遊郭の3つと言われている
韓国人が知っている歴史上の人物3名で代表されるのは、伊藤博文、豊臣秀吉、そして大河ドラマの影響から徳川家康
韓国国内では日本人に対し、過去を悔いないというイメージもある一方で、清潔・礼儀正しい等、相反するイメージが存在している
韓国で親日派と呼ばれる人々については、韓国国内では日本にこびている、というイメージがある
東アジアに住む私たちは、多くの場合外見からは見えない違いを、どのように互いの違いを見つめ、行動していくべきなのか?
戦後生まれの私達にできることは何か?私が謝罪してすむのだろうか?
(当時を振り返り)なぜ大人は日帝時代を教えてくれなかったのか?そして私はなぜ歴史を知らなかったのか?
隣人として生きていく事。それが戦争を起こさない国をつくること。今、私達は良き隣人としてしなければいけないことを、していない。それが間違っている。
仁川の街を訪れる人々と歩きながら、一緒に日帝時代について、これからも考えたい。
それを受け、参加者の方から共有された声/質問をご紹介します。
仁川にはなぜ、今だ日帝時代の痕跡が残っているのか?(あえて残しているのか?戦争の痛みでは?)
仁川では、朝鮮戦争の痕跡と、日帝時代の痕跡双方があると思う。その量等に違いはあるのか?
昨日は慰安婦の日だった。本日の文大統領は日本への批判はなかったが、慰安婦の日の昨日多くの声があがったことを考えると、韓国国内で14日・15日の声はどのようなものなのか?
(日本人の)認識の前に、まず日本人と韓国人が出会った際に、知識量の違いから、話がかみ合わないと感じてしまうのではないか。例えば、歴史的な場所の意味を日本人は知らなかったりする。そこをどう引き上げていくべきか。
自分が何も知らなかったこと、それを認識するのが第一歩。この体験をしないとだめ。
郁子からは最後に、良き隣人として私達ができることはいっぱいあり、一人一人がそれを実施していくことが大事であると、力強いメッセージを頂きました。
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おすすめリソース
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最後に、郁子さんおすすめのリソースをご紹介します。
いわゆる「日帝時代」の資料はたくさん出版されているため、
おすすめは関心事にそって探すのが良いというご助言を頂きました。
以下は、郁子さんが、読み物を通してかの地人々に思いを馳せることのできる書籍を挙げてくださったおすすめです。
『もうひとつの満州』 澤地久枝 (文春文庫)
『慶州は母の呼び声』 森崎和江 (ちくま文庫)
『朝鮮詩集』 金素雲 (岩波文庫)
『中国朝鮮族を生きる 旧満洲の記憶』 戸田郁子(岩波書店)
次回は9月14日の開催を予定しています。
是非ご参加ください。
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